ピンポンパンとけたたましい電子音が鳴り響き「おちんちんランド開園します」と町内放送が流れた。
店内はたちまち騒然となり、客達は皆同じようにばんざいをしながら「わぁい」「わぁい」と楽しげに言い合う。
バイトのひどいさんまで客と一緒に「わぁい」と喜ぶので「何の騒ぎだ」と尋ねたのだが「わぁい」としか返さん。
全体何事だというのだ。どいつもこいつも気でも違えたのではないか？
食い逃げ人形はどうだと目を移すと、それは楽しそうに「わぁい」をしている。
このあばずれめ。なんちゃらランドで遊べる金があるなら、炒飯代くらい払えというのだ。
しばし店内ではしゃぐ奇人の群れを眺めていたのだが、はたして妙なことに気付いた。
「なあひどいさん」「わぁい」「給料削るぞ」「ひどっ」
「どうも妙だ。彼奴ら開園したことを喜ぶばかりで、何故誰一人としてそのちんちんランドとやらに赴かんのだ？」
「一緒に行く人がいないからだと思います。単独でああいう場所へ行くのは拷問ですよ」
へらへら笑いながらさらりと言い放つひどいさんに店内は凍りついた。
かくして「わぁい」の歓声は「わぁん」の哭声と化すのであった。