自らを猫の偽者と称するそいつは中性的で、あたかも猫が人に化け出たような奇怪な風貌であり、
人とも猫とも、男とも女ともつかぬ半ちく者であった。
その人猫もどきは、文句をたれつつ炒飯を頬張る食い逃げ人形の対面に座り、
「じゃあ質問だよ、君に夢があるなら教えてくれるかな？」と訊ねた。
したら銀髪黒助は「決まってるわぁ、アリスゲームに勝利してアリスになることよぉ」とこたえ、
アリスゲームとは何かと再度訊ねる人猫もどきに、長々と詳細を語り始めた。
俺なら、長い、3行にまとめろと短気を起こすであろうところ、やっこさん大したもので、
うんうんと相槌まで打ち、そりゃあ誠実律儀に聴くもんだ。
その聞き上手に調子に乗って、ますます饒舌に語る食い逃げ人形であったが、
不意にそわそわしだすやしどろもどろになり、同じ事を2度3度反復したりと要領をえなくなった。
ふと見ると眼鏡をかけた半裸の少年が、楽しげに話を聴く人猫もどきの後ろに背後霊の如く立ち、
物言わず無表情に食い逃げ人形をじいと見つめているではないか。
はたから見ると甚だ滑稽な絵面であるが、ははん、こいつはさぞ居心地が悪かろう。