厨房にて中華鍋を振る俺の背をえむいがねぎでぺしぺしと叩いている。
はっと嫌な気配を感じ振り向くと、粗末なつなぎを着た若い男が立っていた。
「ウホッいい男！ウホッいい男！」とえむいの奴が叫ぶとおり成る程、中々にいい男である。
男は俺と目が合うや、つなぎのホックを外し陰部をあらわにし「やらないか」と持ちかけた。
突然の事に俺が目を白黒させていると、痺れを切らしたのか男は「そんな事より･･･」と話題を変える。
「俺の金玉を見てくれ、こいつをどう思う？」
どうもこうもねぇこのとんちんかんの露出狂のうすらトンカチ。
食い物屋は衛生第一、んなばちいもんをぶら下げてんじゃあねぇ。
とその時、えむいが男にすうっと忍び寄るや、ねぎを振り上げバシィー！と男の──を引っぱたいた。
流石に仰天したのか男は「勇敢なナイト様に免じて退散するゼ」とすごすご帰っていった。
えむいに、男のナニを叩いたねぎなど捨てて来いと言ったが、えむいは「やー」と大げさに被りを振った。
ならば自分で食うのか？と聞くと、いぬてぃの餌にするのだという。
テレビか何かの影響だろうか？犬の事をいぬてぃなどと、随分妙ちくりんな言い方をするものだ。