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05/03/07(月)06:35:15 No.24854880
運命を実感することができるとすれば、あの時の尿意がまさにそれだ。 衝き動かされるように公園のトイレへと急いでいた。 自分がゲイであると意識したのはいつだったか忘れてしまった。 それでも僕、道下正樹は社会的にはごく普通の予備校生として いわゆるハッテン場とは縁遠い生活を送ってきたのだ。 その帰り道、一目散に公衆便所へと走っていたにも関わらず、 公園に似つかわしくないある人物が目に入り、ふと顔を横に向けた。 広い肩幅をツナギで覆い、その下にTシャツの類を着ていないのだろう、 若い男はだけた胸元が露わで、逞しい身体が見て取れる。 頭髪は機能的に短く刈ってあり、やや癖っ毛であるらしく一房の前髪が 額に垂れ、鼻筋が通った顔は僕に微笑んでいるように見えた。 「ウホッ、いい男」それが無意識に出た言葉だった。 ただし口の中で呟いただけで、彼に聞こえたはずはない。
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