二次元裏@ふたば中島、結婚してくれぇ!! そう言い放つと中島は手元のボタンを押した。男の足元に大きな落とし穴が出現し、そのまま落下していく。男が落ちていった部屋まで移動する中島。部屋に着くと、男は巨大なガラスケースの中に閉じ込められていた。 「これは何の真似だ!?卑怯だぞ!正々堂々と戦え、中島ァ!」 「正々堂々?そんな言葉は弱者が使うものだ。勝利を手にするためなら学校の貯水タンクにミルメールを混入させることも躊躇わない男だぞ、俺は」 男は全力でガラスケースを蹴り割ろうとするが、水族館使用の強化ガラスを叩き割れるはずがない。 「さて、ここまで辿りついた君には普通の拷問では生ぬるいし、ただ殺すのも味気ない」 中島は巨大な音響装置を男のガラスケースの傍にセッティングした。 「また鬱ソングで拷問か!無駄だ、俺はさだまさしや中島みゆきや山崎ハコで死ぬほどヤワな人間ではない!」 「そう言っていられるのも今のうちだ。それに今から流すのは鬱ソングではない。アニソンだ。まぁ黙って聞け」 男が呆気に取られる中、中島は"カードキャプターさくら 主題歌コレクション"をオーディオにセットした。
流れ出したのはカードキャプターのOPとして人気の高い"Catch You
Catch
Me"。軽快なサウンドが響き渡る。 「……これのどこが拷問だ?丹下桜に未練はない。このような真似は無駄だ!」 「ほら、もうすぐイントロだぞ。一緒に歌おうか」 ≪ほら
Catch You Catch You Catch Me Catch Me
待って≫ 「「まって〜♪」」 この曲を知っている者なら、悲しいかな、思わず二人はフレーズを輪唱してしまう。 ≪そう Nice to Meet
You Good to See You
きっと≫ 「「きっと〜♪」」 ≪私の想い あなたのハートに飛んで飛んで――≫ 「飛んでいけぇ……えぇぇぇぇぇぇ!?」 ≪あなたのハートに飛んで飛んで飛んで飛んで飛んで飛んで飛んで……≫ 「ほら、歌えよ。飛んで飛んで飛んで?飛んで飛んでか?飛んで飛んでどうなんだ、あぁん!?」 中島は男を一瞥し、悪意のある笑みを薄ら浮かべていた。 「やめろぉ!CDが音飛びしてるじゃないか!早く早送りしろ!」 ≪飛んで飛んで飛んで飛んで飛んで飛んで飛んで飛んで飛んで……≫
「うわあぁぁぁ!!やめろよ!早く俺に≪ま・よ・わ・な・い♪≫のフレーズを歌わせろ!」 「このCDは予め傷を入れて音飛びするようにしてある。お前がどんなに願ってもこれ以上"Catch
You Catch
Me"は進まないし、音飛びが収まる事はない。お前はここで死ぬまで"飛んで"のフレーズだけを聞き続けるのだ」 男は絶望し、その場で泣き崩れる。 「飛んで飛んで……ふふ、このフレーズだけ聞き続けているとな、やがて"Catch
You Catch
Me"が"夢想花"とごちゃ混ぜになってくる。その恐怖にお前はどこまで耐えられるかな、フハハハハハ!!」 そう言い捨てて中島は部屋を出て行った。地下三階の防音施設に残された男は息絶える九日間、音飛びCDを延々と聞かされ続けていたという……。